塾業界の裏事情

現役塾講師が綴ります。

専門職講師って何者?

学習塾業界はこの「専門職講師」と呼ばれる講師が支えています。言い方は塾によって様々ですが、パートタイム講師のことです。

大学生のアルバイト講師なんかは比較的メジャーですが、結構いい年齢の働き盛りの方でもパートタイム講師をしています。もちろん本業が別にあって副業的にされている人もいますが業界的には珍しいと思います。20年以上講師をしていて本業を別に持っている講師は両手で数えるぐらいでした。あとの方はパートタイム講師一本で生活をしているようでした。

西暦2000年に15~35歳になった世代を氷河期世代といいます。私もここにかかっているのですが、この世代は今35~50歳になっています。

就職がうまくいかずパートタイムの仕事で食いつないでいるうちに年齢を重ねてしまい正規雇用を断念した人たちが多く塾業界に残っています。そもそも本来、パートタイム講師は大学生に門戸を開いていた職種だったのですが卒業後もパートタイム講師の仕事を続ける人が1995年以降増えたとされています。

スーツを着ていてもぱっとみて学生講師は何となくわかるかと思いますが年を重ねたパートタイム講師は正規職員と見分けがつきません。

「なんだよフリーターか」と思わないでください。結構いい先生もいるんです。出勤時間が正規職員に比べて遅いのでその時間をしっかり授業の準備に当てていてそこら辺の正規職員よりよほどよい授業をするかたもたくさんいます。

だいたい10人の講師がいる校舎だと8人がパートタイム講師です。この業界はパートタイム講師なくしては成り立ちません。

ただ、塾を利用する保護者側としてはこのあたりは注意を払う必要があります。

塾側からするといつやめるかわからない人材であることは間違いありません。したがって教育にコストやエネルギーをかけていません。

拠点の責任者に教育を一任している塾が多いので、責任者が教育を諦めてしまっていると変な先生が紛れ込んでいるケースがあります。

保護者の皆さんは塾を利用する意識を忘れてはいけません。信じて任せきりにするのはナンセンスです。チェックしてください。

ちゃんと宿題が出されているか、それを講師が確認している形跡があるか、子供の講師にたいしての印象はどうか。必要に応じて授業の見学にいってください。

あれ?この先生、変だな?と思ったら校舎の責任者レベルの人に相談してみてください。

塾の正社員は忙しい

大手学習塾の場合、その多くは正規職員講師と専門職講師、事務で校舎拠点の人員を構成します。

正規職員講師はいわゆる正社員雇用を受けている職員です。週5日8時間程度の勤務をし、校舎の運営関わる全般と生徒に関係する業務、授業の三つが主なミッションになります。

一方、専門職講師は生徒に関係する業務と授業の二つを担当し、勤務時間が短く五時間程度。中学生の授業しかない場合は三時間程度となり、パートタイムの雇用になります。授業がない日は勤務なしです。パートタイムなので時給も発生しません。

毎日いない先生、出勤が遅い先生は全部このタイプの雇用の先生です。

さて、話を戻して、正規職員講師の1日のタイムテーブルですが


1400 出勤。社内メールと共有事項を確認

1430 懸案事項等打ち合わせ

1500 配布物作成、セット イベント関連の仕事

1600 掲示物作成、掲示、入塾促進活動

1630 上長、本部への報告事項業務

専門職講師への指示だし

1700 前半授業開始

1900 前半授業終了

1930 後半授業開始

2130 後半授業終了

専門職講師からの報告受け

指示だし、相談

2200 完全退勤


塾によって多少のズレはありますがだいたい、こんなものです。仕事の仕方も人それぞれですがイメージとしては30分刻みの時間の中で2~3個の仕事を片付けるような感じです。

各拠点に責任者を含めて2~3人しか正規職員講師は配置されないので、みんな何かしらの仕事を抱えて走り回ってます。

また、全員が担当の顧客を抱えているので、保護者から電話で相談があったり、急に来訪があると、業務の予定はすべてストップします。

昨今は塾のブラック問題や働き方改革の風潮によって定時退勤を義務化している塾も増えていますので、安易に残業ができなくなっています。

自分が正規職員だった際は10時に出社してたまった仕事を片付けるようにしていました。

もちろん残業代はでません。

この辺の事情を理解した上でうまく講師を使うことが塾の利用の第一歩かなと思います。

相談したいことがあるのなら事前に約束をして面談をするという方法がいいと思います。

「先生ちょっと聞いてくださいよ~」といった電話が度重なるとその先生はどんどん疲弊します。

疲弊した場合、どこに皺寄せが行くのか。大抵は授業準備の時間を削り始めます。そうです。タイムテーブルの中に授業準備の時間がないんです。塾講師は授業準備は勤務時間外でやるのが通例です。

通勤時間にもよりますが私は23時ごろ帰宅し、夕食をとり24時から4時まで授業の準備を行い、風呂に入り5時頃就寝。12時に起床し、身支度を整えて出勤というサイクルで通常は生活していました。

仕事がたまった場合は睡眠時間を削って8時に起きるようにしていましたが、同僚の様子を見ていると「仕事がたまってて授業の準備がほとんどできていない」ということを言う人が多かったです。

結構暇そうで忙しいのが塾講師です。まずは自分の担当の講師について理解を深めていくと受験もうまくと思います。

我が子の塾選び「どこの塾がいいの?」

有名大手学習塾の講師なんて仕事をしていると中学受験を始めようとする知人や親戚(親戚がまた多いんです。)からアドバイスを求められることが多いです。質問してくる方々に共通しているのは「業界特有の裏話、オフレコトークを聞きたい」という気持ちがまざまざと表れている点でしょうか。

先に結論を申し上げましょう。どこの塾も似たり寄ったりです。結局、どんな講師に担当にされるかです。塾のブランドはあまり子供の成績に関係がないんです。

この塾はこういうノウハウがあってとか、この塾はこういうタイプの学校に強いとか、ないです。

市場としてまだ50年程度の歴史しかないのが塾業界ですから、当たり前といえば当たり前です。そんなに会社別に特色が出るような業界ではないんです。

強いて言うなら某大手S塾は厳格な学力別クラス編成で有名ですが、あそこぐらいですね。

それも「ついてこられなきゃ知らん」という態度ですから合う子供と合わない子供が明確に別れる特色だと私は思います。(中にもいたことがあるので)

Sさんが人気難関中学にたくさん生徒を合格させているのは、人気難関中学に合格できる素養のある子がたくさん集まってくるからです。Sの最上位クラスの子はそれこそ天才じゃないかと思える子や学力磨きに余念のない秀才のオンパレードです。こういうタイプの子供たちは「ちゃんと勉強してない奴に授業時間をとられたくない」と考えるのが普通なので、厳格な学力別編成クラスを好む傾向にあります。そして毎年合格実績を出し続けている塾を選びます。だからSは強いんです。

言い換えればSに通っていればできるようになるわけではなく、できる子がSを選ぶんです。

ここをお間違いないようにお願いしたいです。


じゃあどうやって塾を選ぶの?

基本は大手であれば塾はどこでもいいと私は答えています。大手は情報を多く持っています。後は担当の先生で決めるので充分です。

それも「よい先生」を基準に決めるのではなく「悪くない先生」であれば問題ありません。

このあたりの話はまたの機会にお話しします。